「邪魔しないでねカミサマ?
 いかな神でもヒトの心には干渉できないんだから」

 絶望は嘲笑う。
 遠い古にて神々が放棄した者を。
 永い年月を経て変わりゆくものを。
 形を持たぬもの。
 定まらぬ故に歪むモノを握り締め。

「世界は平和になんてならないし、人間は幸福にもならないよ。
 ねぇ――――?」

 極炎。
 氷河。
 疾風。
 雷鳴。

「ユウ! やめろ!!」

 叫ぶ。
 解き放たれた力は平和を喜ぶ街を襲う。
 笑い、喜び、歌う。
 それは幻なのだと。
 手にしたものすべては偽者なのだと。

「おい! 聞こえねーのかっ! ユウ!!」

 聞こえる声、背中の衝撃。
 振り返れば微笑む。

「僕はカタいのがジマンなんだよね?
 君とは違って」
「ぐっ……!!」
「ルイ!!?」

 死神の大鎌、風を凪ぐ。
 笑い、笑う。絶望は赤く染まって。
 小さな手に抱く小さな愛を見つける。

「僕の大好きなあの本。今思うと……うん。
 あの魔王は僕に似てるよ」

 勇者の親友。
 優しい人。
 自己犠牲の強い人。
 友達の多い人。
 物語は彼をそう語る。
 よく笑う人……と。

「僕もそうなるよ……きっと、絶対――!!」