滴り落ちる、赤。
削いだ肉片踏み潰して笑う。
一面の赤。
響き渡る笑い声。
「もうやめて……!!」
懇願する声。
僕に言ってるの?
なんで。
まだまだ、足りない。
「いい加減にしろっ! もう、死んでるんだぞ、そいつは」
「そうなの? へぇ、もう死んでるんだ?」
見下ろした。
肉片。
赤。
骨。
なにもない。
生物であった痕跡が何もない。
これはモノだ。
頭の奥が疼く。
「弱いね。ボスのくせに」
「そうじゃねーだろ。おい、ユウ……お前――」
また、ルイが言葉を失う。
どうしてこうもルイは僕の顔を見て驚くのだろう。
そんなにおかしい顔立ちかい?
それとも、気付いたのかい?
「いつから? いつからなの、ユウ」
「なんのことだよ〜ゲンってば。何が、いつからなんだい?」
「はぐらかさないで」
ちらりとルイを見遣る。
知ってる?
知ってた?
「神のヤツが言ってたけどな……オレは、正直な話信じたく
なかったのによ」
「なにをだい?」
「ユウ……いつから蝕まれていたの?」
「なあ! お前はいつからそいつに乗っ取られてたんだよ」
「だからぁ〜?
二人が言ってることが僕には分からないよ?」
赤い、赤。
世界が全て赤く染まればいいのに。
夜の中でも姿を失わない赤に。
染まってしまえばいいのに。
みんな同じになれる。
みんな一つになれるのに。
「歪み……ユウを返せ」
「返しなさい。それは私たちのよ」
あぁ、あぁぁ、ああぁぁあああああああああ。
なんて勘違い!
なんて思い違いっ。
笑いが止まらなくなる。
何も分かってない。
何もかも間違ってる。
「何言ってんだよ〜?
僕はずっと前から僕だよ? 神様がくるよりも前から僕は僕」
変わってなんかいやしない。
こんなファンタジーな世界でも僕は僕。
ニコニコ笑って生き抜く術を探すだけ。
「ユウはそんな目の色してねーだろ!」
「出て行きなさい。ユウの中から」
二人は何で僕を否定するのだろう。
僕は僕。
それ以外のなんでもないよ。
笑って、笑って、笑うだけ。
細めた僕の目はね?
「僕は僕だろ? ずっと前から、君たちに会う前からずっと」
ぜつぼうのあか。
ちのいろ。
ぼくのいろ。
揺れるバランス僕は崩れて赤く染まる。
揺れるバランス君は揺れて紫に染まる。
揺れるバランス君は揺れず青に煌いた。
ぼくはあか。
ぼくはぜつぼう。
ぼくは――ぼく。