バランスが大切なのは世界。
バランスが大切なのは人の心。
壊れるからには理由がある。
壊れた陰には意味がある。
例えばあの父子が壊れた理由は歪みだった。
例えばあの恋人同士が殺しあった理由も歪みだった。
歪みは歪むこと、歪ませることは……
「明けぬ夜はなく、また……沈まぬ朝もない。
ようはバランスなのだ」
神は言った。
バランスが大切だと。
歪みはそのバランスを崩すのだと。
「オレたちが歪みを倒せば全部解決するんだな?」
「そんな簡単なことでいいのかしら」
「簡単というな簡単と! これでも色々と苦労して……」
「苦労性だねぇ〜? なりたくない職業第一位は神様決
定じゃん?」
「ユウ! まったく……どうしてこうもお前らは我を敬おう
という気持ちが……」
「だって犬だし?」
「犬だからな」
「犬だもの」
「おのれーワンワン」
これでバランスがとれてる。
歪みなんて欠片もない僕ら。
犬と……神様と僕とルイとゲンの四人。
これでいいんだよ。
これで……ね?
星々に見る未来が絶望しかないと誰かが言っていたら。
王様はその人の首をはねるんだ。
絶望を叫ぶ人がいたら希望を運ぶ人が現れる。
バランス、バランス。
世界はすべてバランスが一番大切。
いいこと、わるいこと。
希望、絶望。
朝、夜。
「ユウ……」
「どしたの、ルイ」
「歪みってなんだろーな」
「歪みは、歪みじゃん?」
「そうじゃなくてよー……うまく言えねーなー」
「国語の勉強するかい?」
「あーそうだな……んなわけねーだろ!」
「いっひっひっひっ〜」
バランスのいい僕ら。
変わらないといいのにね。
全部、何もかも。
バランスがすべて。
明けぬ夜がないように。
沈まぬ朝もない。
僕たちは今いつにいるんだろうね?
朝なのかな、夜なのかな。
バランスはなにを理由付けて、何を意味にしてくれるのかな?
神様が何を言ってもどうでもいいよ。
どうでも。
「ルイよ……歪みとは身近に潜むもの。
気をつけよ。お前たち三人は絶妙なバランスを保っているの
だということを」
絶望の赤。
希望の青。
揺れる紫。
ぼくたちのいろ。