僕の趣味はガーデニング。
僕は僕であり続け。
君は君であり続ける。
ただそれだけの簡単な事なのに。
どうして君は理解してくれないのだろう?
響いた絶叫は僕を包んだ。
飛び散る赤は僕を染め上げた。
僕の足元に蹲る彼女がひとり。
上げる顔もないまま呻いていた。
夏も近い今日の日。
暑さで制服が蒸れていた。早く涼しい部屋に入りたい。
長い話は嫌い。早く会話を終わらせて部屋に戻ろう。
家の前で僕は彼女を見下ろしていた。
「ねえねえ。早く帰ってくれるかな?
もう僕と君はなんでもないんだ。
僕は君を見たくない。君も僕を見たくない。
それだけなんだ。
早く帰ってくれないかな?
僕は暑いのも嫌いなんだ」
蹲った彼女は呻き声を上げながら僕を睨んだ。
白目が赤目。
真っ赤な爪で僕の足を掴む。
「なによ」
吐き捨てるように。
「なによ!
そんな簡単に捨てられるもんかっ!
この三ヶ月でアンタにどれだけ時間使ったと思ってるの!
私が一時間いくらだと思ってるの!?
無駄にした分を払いなさいよ!!」
誰にでも売る体。
誰にでも売られる言葉。
時間を切り取って売る女。
それが手口。
若さを武器に。
しなやかさを武器に。
とりいってしがみついてしなだれてしゃぶってねだって。
僕が離れられなくなる頃を狙った。
それが分かった付き合いだった。
だから僕から切ったのに。
お互いのプライドが傷つかない距離を保ってプライドを傷つけない時間を使って。
なのに彼女はすべてを無駄にする。
割れた頭を見下ろして僕は確信した。
彼女はきっと生まれながらに可哀想なヒトなんだ。
誰かに寄生しないと生きていけない。
そこにあるということすらも忘れてしまう。
可哀想なヒトなんだ。
夏の暑い日。
汗で湿った制服は二度と使い物にならなくなった。
すっすり涼しくなった夕暮れに庭に埋めた。
洗っても落ちなかったから。
分別も分からなかったから。
ひとりの部屋で僕はアイスを齧った。
「あぁ。今日は暑かった。
こんな日はアイスが美味しい」
静かな家。
可哀想な声も聞こえない。
僕はもう一口アイスを食べた。
僕は僕。
君は君。
別々の存在だから常識も違う。
考え方も感じ方も。
僕は僕。
君は君。
君を可哀想だと思った僕は僕の優しさを君に上げた。
花壇には君の自慢の花が咲いてる。
赤はその内雨が流してくれる。
枯れても君は白い華になれるよ。
僕の庭へようこそ。