「あんこくあくむ」


 よるがきた。
 よるはすべてをおおいつくしてぼくををかくす。
 こどくかんにさいなまれるすべてのそんざいをせせらわらう。
 たすけてとさけぶこえがきこえたそのしゅんかん、
 よるはまよえるひつじをかみころす。
 どうわのようなおおきなすがた。
 おとぎばなしのようなざんこくさ。
 すべてしんじつ。
 ぜんぶほんとう。


 だってよるは。


 いまだってぼくらをみおろしてわらってる。



 赤い月が出る晩は気を付けなさい。
 母がそういったことを忘れて外へ出た子供は死んだ。
 月が出ない晩は家にいなさい。
 父の言葉を忘れた娘は汚された。
 血と泥に塗れて見つかった骸二つ。
 良くあるニュースだと誰も騒ぎやしない。
 やりにくい世の中だと悪魔が笑う。
 やりやすい世の中だと人間が笑う。
 どちらが人間でどちらが悪魔だか。
 空の向こうで天使が笑った。


 あかいよる。
 あおいよる。
 どちらもおなじよる。
 ふかい、ふかい、やみにのまれてねむれ。


 あくにもぜんにもそまれぬにんげんよ。
 あんこくあくむのこもりうた。
 みらいにはぜつぼう。
 かこにはしつぼう。



 ぜつぼうしてまえにすすめばなにもこわくない。
 だってきたいなんてしてないからね。
 ふこうなじんせいおめでとう。
 うまれておめでとう、これからはしぬためにいきるんだ。


 あーあーくだらないいっしょうだったまそんぞくだ。


 あんこくあくむ。


 おわりはここだ。


 あんこくあくむ。

 さようなら。

 

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