キミと生きるのがこんなに大変なんて思わなかった。

 だってそうだろ?

 キミはとってもキレイだから、ボクもつり合うようにキレイにならなきゃ。

 キミはとっても強いから、僕もつり合うように強くならなきゃ。

 キミはとってもプライドが高いから、そういったもの全部隠さないと。

 キミに嫌われちゃう。

 キミに嫌われるのは嫌だから。

 キミと生きるのがこんなに大変なんて思わなかった。

 キミと生きる時間は甘い砂糖菓子のようだけど、こんなにもボクを悩ませる。

 キミが眠っている時が一番の至福。

 静かなキミは何も言わずにボクに抱き締められてくれる。

 怒らずに、怒鳴らずに、なにをしても黙っていてくれる。

 

 あぁそうだ。

 こんなことを考えた。

 キミが眠りつづけられるようにいいクスリを持ってこよう。

 神経質なキミに快眠をプレゼント。

 ボクはなんてキミ想いだろう。

 きっとキミは嬉しさのあまり涙を流すよ。

 

 眠る前には食事をとらないとね。

 キミの作った料理はとても美味しいから。

 もっともっと味わいたいけど、キミのために我慢するよ。

 食後は二人でべったり会話しよう。

 キミはもしかしたら嫌がるかもしれないけど。

 けど、その嫌そうな態度も見納めだから我慢するよ。

 キミの大好きなハーブの入浴剤。

 ボクはとても苦手だけどキミのために入れるよ。

 怒られるかもしれないけど二人でお風呂に入ろう。

 これが最後の入浴だからね。

 これからはボクが毎日拭いて上げるよ。

 ハーブももちろん使うから。

 ベッドにはいる前にちょっと待って。

 キミからキスして欲しいなんて言ってみた。

 バカじゃないの? って冷めた目だけど、珍しくしてくれた。

 嬉しいな。嬉しくて思わず舌入れちゃった。

 やっぱり怒られたけど、嬉しいな。

 目を閉じる前にもうちょっと待って。

 もっかい、今度はボクからキスするよ。

 そしたら目を閉じていいから。

 あと全部ボクに任せてくれればいいから。

 

 うん……そう……

 

 お や す み

 

 

 あぁ――

 とてもいい気持ち。

 抱き締めても文句を言わないキミ。

 強く抱き締めても怒らないキミ。

 ボクのしたいようにさせてくれるキミ。

 あぁ、ごめん。

 ちょっとアザになっちゃったね。

 ボクはこっちも好きだからついね。

 キミが起きてたらできそうにもないことだよね。

 キミは子供が嫌いだから……

 ボクはキミのことが大好きで、キミに良く似た女の子が欲しいのに。

 あぁ、でも。

 酔ったときだけは素直だったよね。

 ボクに似た女の子だったら、きっと大事にし過ぎて壊しちゃいそうって。

 たくさん洋服を買って、たくさんのアクセサリーを買って。

 大事に大事に育てるんだって。

 酔ってるときしかつくろうとはしなかったけれど。

 もしかして、キミなりの照れ隠しだったのかな。

 酒に強いキミが酔うはずなんて……

 あれ?

 おかしいな。

 なんだか酷く胸が痛いよ。

 キミに何もいわれてないのに。

 おかしいな。

 もしかしてこれのせい?

 キミの引出しの中から見つけた手帳。

 知らなかったよ。

 教えてくれなかったよ。

 ねぇ、キミは……

 キミのココには誰がいるの?

 ねぇ、おきて。

 キミに聞きたいことがあるんだ。

 キミに言いたいことがあるんだ。

 起きて、ねぇ。

 

 

 キミがボクを愛してるなんて証が無いからボクはいつの間にかキミを疑ってた?

 ボクはキミを愛してると思い込んでとても酷いことをしてしまった?

 あぁ――どうしよう。

 何も言わないキミが酷く冷たいよ。

 怒ってよ。ボクを叱ってよ。

 キミを信じきれなかったボクをどうか殴ってくれよ。

 

 

 もっともっと言えばよかったんだ。

 

 キミを愛してる。

 物言わぬキミを抱くのはボクの腕。

 

 ボクとキミの間には無情なクスリ。

 

 これがピンクのラヴポーションだったらどれだけいいことか。

 

 あぁ……あぁぁ……

 

 白濁の罪に溺れて融けてしまいたい。

 キミの子宮の奥でボクが殺めた嬰児に謝罪を。