頬に。

 額に。

 手に。

 首に。

 足に。

 背中に。

 胸に。

 腹に。

 太股に。

 

 

 ――唇に。

 

 

 少ししつこいのかもしれない。

 けれど。

 アシュレイドは静かな寝息を立てる想い人へと目線を落とす。

 ようやく戻ってきた時間。

 ようやく手にした時間。

 ようやく、この手に――

「私の傍で安心して眠ってくれるあなたが……愛しい」

 戦続きで荒れた髪を撫でる。決してさわり心地がいいわけではないが、

彼女への感情がより大きくなる。

 種族の違いなど気にしない。

 触れる肌が真実で――

 交わす言葉が約束。

「年甲斐もない、とあなたは笑うでしょうね」

 けれど――

 赤く花を咲かせた、白い腕に触れる。

 その付け根には、この先にも訪れるであろう絶望が、この世界の全ての

闇が潜んでいるけれど。その黒い感情すべてを浄化するかのように、口付けた。

 くすぐったそうに身をよじる姿さえ愛しい。

「……帰って来てくれたことを、嬉しく想います……」

 小さく囁いて。

 頬へと口付けを落とす。

「願わくば、この安息をとこしえに」

 決して細くはないが、男よりはずっと細い首筋へと口付ける。

「ん……」

 身をよじり、想い人は目を開いた。

「おはようございます」

 アシュレイドの言葉に想い人は、どこか夢うつつといった表情で笑った。

「おはよう」

 そのまま頭をアシュレイドの胸へと摺り寄せる。まるで猫のようだ――微

笑んで、胸の中の想い人の顔を自分へと向けさせる。

「愛しています。この世界に誰よりも、何よりも」

 甘い言葉――と彼女は言うのだろう。

 その言葉を受け取って、満足そうに微笑むその姿が愛しい。

「……わたしも……」

 小さな声で返す。

 彼女が彼女であるということを受け入れた証。

「――生まれ、私と出逢ったことを……感謝します」

 目を閉じて。

 濡れた唇へと。

 

 一夜でもいい。

 

 あなたと繋がることができるのなら。

 

 それは永久に続く幸福だから。

 

 互いの唇が触れ、そのまま溶けてしまえばいいと。

 

 願ったのはどちらだったか。

 

「愛しています……愛して、愛して……います……っ……だから――」

 

 

 どうか、再び私の腕へ。

 何回でもキスを差し上げます。

 この命尽きるまで、あなたの好きなキスを。