舌を這わせて皮膚をすべる。
 高鳴る鼓動にこの息は乱れて――

「おなかの中……くるしいよ……」

 小さく漏らした吐息と共に甘い嬌声が開かれたままの唇から溢れる。
熱い肉壁に圧迫される自身もまた、息苦しいような悦楽に脈打つ。
 熱気に紅潮する頬、汗ばむ肌。
 しっとりとしたさわり心地を堪能するかのように頬を寄せれば、くすぐっ
たそうに目を閉じる少女の荒い息遣いが耳の奥に響く。
「ねぇ……」
 少女の小さな手が男の髪へと触れる。どこか怯えているようにも見える
震える小さな手は、少し硬いクセッ毛を指で梳いて、まるで毛の長い動物
に触れるかのように優しく愛撫していた。
「ん?」
 髪を撫でていた手をとり、その指へと口付ける。
 こんなにも小さな手の平の末端までもが焼けるように熱い。男は少女の
指先を軽く舐め、そのまま根元へと舌を這わせる。くすぐったさと、背筋を
走る電気にも似た感覚に少女の細い体が仰け反った。
「あ、は……ぁ」
 きつく閉じた瞼から零れ落ちる涙の雫。それが頬を伝い落ちていく姿は、
一枚の絵画を見ているような気分にもなる。男は、小さく息を吐いて、少女
の指の関節へと歯を立てた。
「いたっ……」
 少女の体が小さく痙攣する。
 痛みに顔を顰めようともその愛らしさは損なわれることはなく、むしろ少女
の魅力を何倍にも引き立てているようにも思った。
 より強く歯をたてれば、ギリギリと硬い骨の感触が前歯に伝わってくる。そ
の感触を強く感じれば感じるほど、少女の幼い顔は苦痛に歪んで恐怖に喘ぐ。
 男は笑う。
 ――その顔が見たかったのだと。
「いた……いよぉ……」
 震える声で囁かれる。それだけでどうにかなってしまいそうだ。
 ようやく膨らみ始めたばかりの胸。そこに申し訳程度にある乳房を手で寄
せ、肋骨に圧力をかけながら手の平を擦りつけるようにして撫でる。小さな
突起が存在を主張するように硬く尖り、滑らかな肌とは違う感触を手の平に
感じさせている。
「ねぇ、なんで……」
 肋骨を圧迫された息苦しさに少女が喘ぐ。
 強く掴まれた部分が赤くなり、爪を立てた部位からは僅かに血が滲んでいた。
「こんなこと……するの? あたしは、そうだん……に、きただけなのに……」
 男の顔に笑みが浮かぶ。
 ソファの陰に隠れた赤い鞄。脱ぎ散らかした衣服についた名札と、黄色い帽
子。指定と何ら外れていない白い靴下だけを身に付けた少女の幼い体に、深
々と熱い楔が打ち込まれ――
 破瓜の痛みに裂けた蕾は赤い血を滴らせ、充血しながらも目前で笑う男の
欲望を受け入れていた。
「なかま……は、あっ……ずれ……ど、うすればいいの……?」
 少女の足元には小さなスリッパ。両親から買い与えられたものは今朝方隠さ
れたという。教室でも独りのまま、理由も知らないままに孤独を味わっていた少
女は、男の元へと相談にやって来た。
 黄昏時の応接室。
 外を行き交う生徒たちの声が聞こえ、少女はまだこの行為の意味を理解して
はいないものの、背徳的な何かを感じ取ってはいるらしく、声が聞こえるたびに
体を震わせる。
 そのたびに締め付けられる下半身が心地良くて、男は今にも達してしまうかと
思った。
「ね……せんせぇ……」
 浅い呼吸と、熱い吐息。
 混ざり合う最中に響く嬌声はいかな音楽よりも素晴らしい音色を奏でてくれる。
 男は少女の細い首へと手を伸ばし、昼と何ら変わらない優しい笑みを浮かべた。
「仲間はずれを解決したいんだね?」
 小さく頷く少女。
 ジワジワと滲む血が真っ白な肌を染めていく。ゆっくりと、それど確実に。
 それはまるで清らかな泉が汚染されていくようで――
 男はどこまでも優しく、どこまでも満ち足りた顔で告げた。



「君がいなくなればそれでいいんだよ」




 じきに止まる心臓。
 小さく痙攣する幼い肢体は白濁に塗れていた。
 白と赤が混ざり合う姿を眺めていた男は、やがて衣服の乱れを直すとその部
屋を後にする。
 小さく笑い、
「ここの鍋と果物ナイフじゃ小さすぎるから……取りに行ってくるから待っててね」
 カラカラと引き戸を開けて出て行く。
 静寂に包まれた部屋で小さく聞こえる言の葉。

「せん……せぇ……」

 やがて訪れる真なる静寂。
 一人で食事を取っている男を見つけた生徒は応接室の窓を叩いて、
「先生なにたべてんのー?」
「なにって……」
 どこまでも優しい微笑。
 どこまでも満ち足りた微笑。


「とても柔らかい肉を使ったシチューだよ」


 血の匂いがする、白いシチューだよ。