深い、深い、闇に沈んでく。
死んじゃったのかな。
また、死んじゃったのかな。
怖いよ。
嫌だよ。
どうして。
こんなことになっちゃったの?
私は平和のままがよかったのに。
もう、やだよ。
怖いよ………
「怖くないだろ」
だれ?
「忘れたか? しょうがないよな」
凄く懐かしい…けど、分からない。
「まだ分からなくていい。今は俺の話をきけばな」
何の話?
「寂しい、太陽の話だ。生まれながらにしてこの世
のすべてよりもまばゆい光を宿して。この世界の何
よりも熱い体をもっていた、輝くことしかしらない子供の話」
………すごく、身近に感じる。さっきまでそばにいたような…
「そうかもな。
ソイツは双子の姉のように、両親に抱かれることはなかった。
熱すぎて触れなくてな。だからアイツはずっと独りだった。
姉以外に触れられるものがいなかった」
かわいそう………
「だから、ヒネくれた。
本当は好きなんだよ………自分を愛してくれる存在がいる場所が。
自分を認めてくれる存在が。
だから…太陽は必死で戦う。その灼熱で戦うんだ。
けどな、そんなことで戦いに勝てるわけがない。相手が悪すぎる。
だから太陽は一人の歌謳いを仲間にした。道具じゃなくて、仲間にな」
………それ、白い仮面の…
「黙ってな? ま、その仲間とその場は勝利した。
けど、それで終わらないって知ってたからな。
歌謳いは太陽を裏切ったフリをして地獄に落とされた。
地獄から次代の切り札を護る為に」
………あれ…どこかで…きいたこと、が…ある。
「今の切り札は…いい子だからな。
優しくて、誰かの傷みを知ることのできる…
走るのが速い…大切な、女の子」
………あ………
「太陽は歌謳いに裏切られたと、今でも思ってるからな
…ヒネてるけど、いいやつなんだ。
嫌わないでやってくれ。物凄い、寂しがりやだからな」
………もしかして………ずっと、ずっと………忘れてたの…? 私。
「はは。俺の姿、見えないのに分かったのか?
………ほんと、お前だけは………」
………私………
「俺の役目はお前を護ること。
頑張れ…お前のために、あの歌はあるからな」
………おにい………ちゃん………っ
暖かな手が、頭を撫でてくれる。
小さい頃から大好きだった。
失ったことも忘れて。
この手に残ったのはあの歌。
――じゃあな結依…元気でやれよ――
あの人は未来が見えてるみたいに行動してた。
「JOKER」は………切り札の歌だったんだね。
ありがとう…頑張るから。
見ててね。あの、赤い花畑で。