ゴトン、他の仮面の生徒たちが発した音とそう変わらない音をたてて頭部が落ちる。
噴出した血液が白い壁を赤く染め、窓を曇らせた。
「あ………あ……」
床に転がる頭部。虚ろな眼差しの――
「或斗………あると…私…或斗を………」
声色が変わる。それはジョーカーのものではなく、神薙結依そのものだった。光のない
死んだ目を凝視して、自らの罪に彼女は頭を抱えた。
「なんで、気付かなかったの…?! どうして、どうして………!!?」
髪の毛を鷲掴みにして、頭を激しく揺さぶりながら叫ぶ。
笑んだ仮面には似つかわしくない、絶叫が廊下に響き渡る。
「なんで…気付かなかったの…!? 幼馴染なのに、私…わた――っ!!!」
足首を、掴む手。
「或斗…?! なん、で…」
離れた位置にある頭部が、動くはずのない口が開かれる。
「酷い、ことをするよな。結依」
喋るたびに血を吐く。
真っ赤な口が、真っ赤な歯が、視界に映るたびに頭痛が激しくなる。
「幼馴染のオレに気付かないどころか簡単に殺して……」
足首を握る腕に力が込められる、骨が嫌な音を立てて軋む。今にも折れてしまいそうな
気がした。だが、逃げることもできない――足が、動かない。
「或斗、やだ…なんで、どうして………」
「お前に殺されたのが苦しくて、お前を道連れにしないと成仏できねぇよ」
掠れた声。
聞こえるはずのない声。
恐怖が、一気に脳を支配した。
「死んでくれよ、結依――」
床が沼のようにぬかるむ。足を引きずり込まれ、彼女は思わず悲鳴をあげた。
「いやっ!!!」
「お前に拒否権なんてないだろ? ガキのころから、ずっと」
「―――!!!」
何かに、亀裂の入る音がした。
空気が――冷える。